実物件から生まれた、革新的な地下埋設システム
2022年7月、株式会社長大様との連携により、V-nasClairシリーズに新製品が誕生しました。既設埋設物を簡単に3次元化する「MAISETSU_Kit」、電線共同溝設計を革新的に、かつ品質向上を実現する「DENKYO_Kit」です。
システム開発の発端は、長年KTS製品を愛用いただいていた長大様からの「道路線形要素に追従する機能の応用で、電線共同溝計画が容易に行えるのではないか」という一言でした。かねてより、3次元設計システムの開発に尽力していた当社と構想が合致して、晴れて本格始動となったのです。
革新的なシステム誕生の経緯
設計者の理想を実現
システムに必要な機能や作図工程等、長大様の電線共同溝設計者としての視点を交えて協議を重ね、システム開発が進みました。
電線共同溝設計業務では、電力会社や通信事業者、埋設占用企業者など、関係者との協議・調整を行います。多岐にわたる関係者との協議の過程で、度重なる設計の修正や複数図面の整合性チェックなど、手戻りによる作業手間やコスト増加の課題がありました。
この課題を踏まえて、3次元空間の中に平面計画と縦横断計画の情報を一元化することで、3次元モデルの変更に追従する平面図や縦横断図の自動作図を可能としました。これにより、工期短縮と品質向上を実現する、革新的な「3次元設計システム」として進展したのです。
実務に即したシステム
電線共同溝の3次元設計では、既設埋設物の3次元モデルの利用を前提としています。
開発当初、既設埋設物のモデリングにおいて2次元図面を基とする仕組みを構想していました。しかし、「埋設図の作成は、各事業者が保管する紙台帳をベースとしている。」という長大様の提言をふまえて、”2次元図面を3次元化する”という開発工程を抜本的に見直しました。画像データからトレースし、直接3次元モデルを自動生成する、というシステムに大きく舵を切替えたのです。
長大様が長年培った電線共同溝設計のノウハウと、それを実現可能とする当社の技術力が合わさることで、極めて実用性の高いシステムとなりました。
実務での導入効果
無電柱化検討業務で初導入
長大様が受注した東京都杉並区発注の無電柱化検討業務では、本システム導入により大幅な業務省力化を実現しました。
3次元設計では空間情報が一元化され、作業の手戻りが大幅に削減されます。同時にマニュアル適合性のチェックも可能であるため、省力化を図りつつ成果の品質向上に繋げることも可能なシステムとなっています。
この業務では、まだシステム操作に不慣れな作業環境においても、従来比50%程の省力化を図ることが出来ています。今後、操作に慣れてくれば70%の省力化も可能となります。
限られた業務工程の中で2次元図面と3次元モデルのアウトプットを作成することが出来たため、受発注者間で無電柱化後の整備イメージを共有することができ、高い評価をいただきました。
3次元設計のパイロット事業となる
国土交通省が3次元設計を掲げるなか、電線共同溝は前人未踏の分野でした。そんな折、大阪国道事務所発注業務において、長大様は本システムを活用し、電線共同溝の3次元設計に挑みました。
2次元図面間の整合性の確保や、既設埋設物との干渉箇所の可視化により、作業の効率化に成功したそうです。このような先鋭的な取り組みが評価されて、事務所長賞の受賞に繋がりました。